「人」のトッピング
富士・箱根・伊豆国際学会は設立5年を迎え、この度「学会誌」を発行する運びとなりました。この会を今まで温かく支えてくださった会員と地域の皆様に深く感謝申し上げます。
私は10年前、静岡に着任しました。しかし、それ以前から外人さんに「あなたは日本のどこが好きなの?」と聞かれるといつも「静岡」と答えていました。「Why?」と必ず返されます。
「う~ん、そうねえ、温泉がたくさんあって、、、」おいおい、大分の方が多いよ、ともう一人の私がささやきます。
「う~ん、緑が多くてきれいだし、、、」おいおい、日本の70%は山林で、別に静岡の特徴じゃないよ、ともう一人の私がささやきます。
「う~ん、リゾートでリラックスできるところかなあ」おいおい、静岡はモルジブやモリシャスのようなビーチリゾートは一つもないじゃないか、ともう一人の私がささやきます。と、実にちぐはぐ、かつあいまいな答えに終始していました。
「静岡」、と答えてしまうその魅力は一体何なのでしょう?こちらに定住した結果、たどりついた私の答えは「人」の「トッピング」です。
旅行された時のことを思い出してください。何が印象に残りましたか?豪華なホテルでしょうか?美味しい料理でしょうか?それとも長年憧れていた名所の前に立った時でしょうか?しかし私が旅行した時の印象を強く残してくれるのは名所でもなく、料理でもなく、旅館でもありません。
言葉が全く通じないのを全然気にせず、肩を組んで一緒に飲んだパリのラグビーファン。地元の料理屋で恥をかえりみず、(あまり見たくない)裸踊りを披露してくれたロードスの「おっさん」。満員の電車なのに私が息子の隣に座れるように席を譲ってくれた台北のお兄さん。道に迷っていたらホテルまで連れて行ってくれたメキシコシティーのお巡りさん、などでしょうか。
これらの「人」はその場所の印象に素晴らしい「トッピング」を加えてくれました。静岡は優しい、でも控えめな、本当に素敵な人たちであふれていると思います。なのでどこに行っても後味のいい思いを「トッピング」してくれるのです。
私は静岡のあるべきポジショニングを問われると、こう提案します。「Work in Tokyo (東京で仕事して)、Tour in Kyoto(京都で観光して)、Relax in Shizuoka(静岡でリラックスしてください)」。これを堂々と言えることのできる県民性を持った所はあまりないと思います。素晴らしい山と海を持った自然や、癒される温泉も、良き「トッピング」がなければあまり心に残りません。私はこの「人」が静岡最大の無形資産であり、また一番のコア・コンペテンス(他に真似できない、独自の核となる能力や資質)だと思います。
その「人」たちが住む、この雄大な自然や素敵な環境を保護し、さらに発展させていくためにあるこの学会は大きな意味と使命を持っていると思います。これからも皆様の温かいご支援をお願いしたく、何卒よろしくお願い申し上げます。
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